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2026.10.17

【作 ひやおろし2026・作 布都麻・洗心 純米大吟醸】

祇園華舞で味わう秋の日本酒。作 ひやおろし2026・作 布都麻・洗心 純米大吟醸

秋が深まると、食材だけでなく、酒にも季節を重ねることの豊かさが感じられます。

日本酒は、米と水、麹、酵母、そして蔵人の仕事によって醸されます。しかし、その味わいを形づくるのは、原料や製法だけではありません。米をどこまで磨くのか、どのような味わいを目指すのか、醸した酒をどのような時間を経て届けるのか。そうした選択の積み重ねに、蔵ごとの思想が表れています。

今回は、祇園華舞でご紹介する三つの日本酒、「作 純米吟醸 ひやおろし 2026」「作 布都麻」「洗心 純米大吟醸」を通して、季節、米、そして造り手の思いに触れてみたいと思います。

春に醸し、ひと夏を越えて迎える「作 純米吟醸 ひやおろし 2026」

三重県鈴鹿市の清水清三郎商店様が醸す「作 純米吟醸 ひやおろし 2026」。春に醸した酒をひと夏、冷蔵で熟成させ、秋に届ける季節限定の一本です。

原料米には山田錦を用い、精米歩合は55%。夏を越した穏やかな酸と、干し草を思わせる香り、落ち着いた後味が特徴として紹介されています。

ひやおろしの魅力は、単に秋限定という希少性にあるのではありません。醸されたばかりの酒とは異なる時間を経て、味わいが整っていくことに意味があります。

日本の季節感には、走り、盛り、名残という考え方があります。初めて出会うものを喜び、旬の充実を味わい、やがて去りゆくものに心を寄せる。食材の移ろいを大切にする日本料理の美意識は、季節の酒を味わう姿勢にも通じています。

ひと夏を越した酒を盃に受けるとき、そこにあるのは味わいだけではありません。春から秋へと移る時間と、その時期にふさわしい酒質を目指した蔵人の仕事です。

稲妻の一閃と静寂を名に宿す「作 布都麻」

同じ清水清三郎商店様が醸す「作 布都麻」は、雄町を精米歩合35%まで磨いた純米大吟醸です。

雄町は、米そのものが持つ奥行きある味わいで知られる酒米です。布都麻では、その雄町を丁寧に磨き、透明感のある旨味と澄んだ輪郭を目指しています。ほどよい酸が味わいを引き締め、深みを感じさせながらも、静かに切れていく後味へとつながります。

この酒の興味深さは、味わいだけでなく、銘に込められた思想にもあります。

蔵元の説明によれば、「布都」は稲妻の閃きによって世界が断たれ、その後に訪れる沈黙を表し、「麻」は古来より祓いと清浄を象徴するもの。緊張の一瞬と、その後に広がる静寂を、一つの酒名に重ねています。

料理の世界にも、火を入れる瞬間、包丁を動かすわずかな時間、盛り付けを終えて器を置く所作など、一瞬の判断が全体の仕上がりを左右する場面があります。その後に訪れる静けさもまた、仕事の一部です。

布都麻の名に込められた一閃と静寂という考え方には、そうした仕事のあり方にも通じるものを感じます。

洗練されたふくらみを追求する「洗心 純米大吟醸」

新潟県長岡市の朝日酒造様が醸す「洗心 純米大吟醸」は、契約栽培米「たかね錦」を麹米、掛米ともに精米歩合28%まで磨き、ゆっくりと熟成させた一本です。アルコール分は15度。蔵元は、この上なく淡麗でありながら、洗練されたふくらみを感じる味わいと説明しています。

精米歩合28%という数字は、米の外側を大きく磨き落とす工程を経ていることを示します。ただし、米を磨く割合が小さければ小さいほど、あらゆる酒が優れているというわけではありません。目指す酒質に応じて、米のどのような部分を生かし、どのような味わいを形にするか。それが酒造りにおける設計の根幹です。

「洗心」という名前には、初心に戻り、人を尊び、きらめき生きる姿という意味が込められています。契約栽培米を育む方々と向き合い、磨き、醸し、熟成を経て酒を届ける。そこには、目の前の成果だけではなく、酒造りそのものに向き合い続ける姿勢が感じられます。

淡麗という言葉は、単に軽い味わいという意味ではありません。余計なものを感じさせない澄んだ印象と、その奥にあるふくらみ。その両立を目指すことにも、米を育てる段階から醸造、熟成までを見据えた仕事が関わっています。

三つの酒から見える、造り手の異なるまなざし

今回ご紹介した三つの酒には、それぞれ異なる個性があります。

「作 純米吟醸 ひやおろし 2026」は、ひと夏を越した時間に目を向ける酒。「作 布都麻」は、雄町の個性と、銘に込められた一閃と静寂の思想を感じる酒。「洗心 純米大吟醸」は、米を丁寧に磨き、ゆっくりと熟成させることで生まれる淡麗さとふくらみを追求する酒です。

精米歩合55%、35%、28%。数字を並べるだけなら、違いは簡単に比較できます。しかし、本当に目を向けたいのは、その数字を選んだ理由と、そこから何を生み出そうとしているのかという造り手の考え方です。

酒の背景には、米を育む農家様、原料を見極める蔵人様、仕込みや熟成を支える多くの方々の仕事があります。一杯の酒を味わうとき、その味わいを生み出した人々の手間と時間にも心を向ける。その姿勢を大切にしたいと考えています。

日本料理と酒がともに整える時間

日本料理と日本酒は、料理が酒を引き立て、酒が料理を引き立てるという関係だけでは語り尽くせません。それぞれに素材と造り手があり、異なる考え方と時間が重なって、一つの席の体験を形づくります。

祇園華舞では、料理だけを主役とするのではなく、食材や酒が持つ本来の魅力を損なわず、お客様にお届けすることを大切にしています。器、設え、職人の所作、カウンターを通して感じる香りや音。その一つひとつが調和してこそ、食事の時間は豊かなものになります。

一日一組様のために心を尽くすことも、同じ考え方につながっています。限られた時間の中で、お客様と向き合い、食材や酒に整えていただきながら、その日、その席にしか生まれない一期一会の御馳走をお届けする。

日本料理を味わうことは、季節を感じ、造り手の思いを受け取り、日本の食文化に触れることでもあります。

一杯の酒が、味わいの記憶だけでなく、米を育んだ土地や醸した蔵の仕事に思いを巡らせるきっかけとなる。そのような時間を、これからも大切にしてまいります。

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