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2026.10.31

【荷札酒 越淡麗、甍 銀・黒、ゆきの美人 純米酒 エクストラ 麹40%】

祇園華舞で出会う日本酒。荷札酒 越淡麗、甍 銀・黒、ゆきの美人 純米酒 エクストラ 麹40%

一杯の酒の向こうには、米を育む土地があり、原料を見極める人がいて、醸造の細部に向き合う蔵人の仕事があります。

日本酒の味わいは、原料米だけで決まるものではありません。米をどこまで磨くのか、どのような酵母で醸すのか、仕込みの中で何を大切にするのか。それぞれの選択が重なり、蔵ごとの酒質を形づくります。

祇園華舞では、酒を料理に添えるだけの存在とは考えていません。酒もまた、造り手が時間をかけて整えたものであり、料理とともに一つの席を形づくってくれる存在です。

今回は、異なる土地と造りの考え方を持つ三つの日本酒をご紹介します。

新潟県の酒米と向き合う、荷札酒 越淡麗 しぼりたて

新潟県の加茂錦酒造様が醸す「荷札酒 越淡麗 しぼりたて 26BY」。原料米には新潟県で開発された酒造好適米、越淡麗を用い、精米歩合50%、アルコール分13%の原酒として仕立てられています。

越淡麗は、山田錦と五百万石を交配して育成された新潟県の酒米です。大吟醸酒造りを見据えて開発された品種であり、両親となる品種の特性を受け継ぎながら、新潟の酒造りの可能性を広げてきました。

精米歩合50%という数字は、玄米の重量に対して50%まで磨いた米を用いることを意味します。ただし、精米歩合だけで酒の優劣が決まるわけではありません。米の特徴をどのように引き出し、香味のどこに重心を置くかという設計が、最終的な味わいを左右します。

また、アルコール分13%の原酒という点にも、この酒の設計が表れています。原酒とは、一般に製成後の加水調整を行っていない酒を指します。アルコール分を抑えた設計であっても、原酒としての香味のまとまりを追求することはできます。

「しぼりたて」という言葉には、酒が生まれたばかりの時期ならではの魅力があります。時間を経て落ち着いた味わいとは異なり、搾ったばかりの酒が持つ瑞々しさに向き合えることも、その楽しみの一つです。

新潟の米と水、そして加茂錦酒造様の技術が重なって届けられる一杯。その背景を知ることで、盃の中にある味わいを、より深く受け取ることができます。

土地の水と米を見つめる、甍 銀・黒

長野県北安曇郡松川村の甍酒蔵様が醸す「甍 銀・黒」。北アルプスの麓に位置する松川村の水と米に向き合い、その土地の個性を酒に映そうとする姿勢が感じられる一本です。

甍の銀シリーズにおいて、銀・黒は香り、旨味、酸味の調和を重視する酒として紹介されています。果実を思わせる香りや、米由来の瑞々しい甘みと旨味、後味を整える酸味。そのバランスを大切にする考え方が、食事とともに味わう酒としての魅力につながっています。

日本酒にとって、水は仕込みを支える重要な要素です。米の特徴をどのように引き出すかという問いは、原料米や精米歩合だけで完結しません。水の性質、麹の育ち方、発酵の進み方など、複数の条件を見極める必要があります。

さらに、米を育む地域と醸造する土地の関係も欠かせません。自然の恵みを受け取るだけでなく、その土地の条件を知り、酒質に反映させること。甍酒蔵様の酒造りに目を向けるとき、そうした地域と造り手の関係にも心が向きます。

なお、「甍 銀・黒」には原料米や製法の異なる商品展開があります。今回の一本について、個別の原料米や火入れの仕様までは確認できないため、ここでは銘柄全体の特徴と蔵の姿勢に焦点を当てています。

麹米の磨きに工夫を重ねる、ゆきの美人 純米酒 エクストラ 麹40%

秋田県秋田市の秋田醸造様が醸す「ゆきの美人 純米酒 エクストラ 麹40%」。この酒の特徴は、麹米と掛米で異なる精米歩合を採用している点にあります。

原料米は、麹米に百田、掛米に秋田酒こまち。麹米は精米歩合40%、掛米は60%まで磨き、協会6号酵母で醸されています。アルコール分は15%。麹米をより丁寧に磨きながら、純米酒としての旨味を残し、透明感のある酒質を目指した設計です。

日本酒造りにおける麹は、米のでんぷんを糖へと分解する酵素を生み、酵母によるアルコール発酵を支える重要な役割を担います。麹の働きは、糖の生成だけでなく、酒の香味を形づくるうえでも大切です。

麹米を40%まで磨くことは、精米歩合40%の酒をそのまま意味するわけではありません。掛米は60%精米であるため、この酒では麹米と掛米それぞれに異なる役割を持たせています。数字を一つだけ取り出して評価するのではなく、全体の設計を理解することが大切です。

酵母についても同様です。協会6号酵母は、秋田県の新政酒造様に由来する酵母として知られています。酵母の特性は発酵に関わり、香味の構成にも影響します。ただし、酵母だけで酒の味が決まるわけではなく、原料米や麹、温度管理など、醸造全体の組み合わせによって酒質が形づくられます。

この酒で注目したいのは、麹米を磨くという技術的な工夫を、米の旨味を残しながら透明感を得るという目標につなげている点です。精米歩合の数字を追うこと自体ではなく、その先に目指す味わいがある。そこに、造り手の仕事の意味があります。

三つの酒に映る、それぞれの設計思想

今回ご紹介した三つの酒には、異なる視点から酒造りに向き合う姿があります。

荷札酒 越淡麗 しぼりたては、新潟の酒米と13%の原酒設計。甍 銀・黒は、長野県松川村の水と米に向き合う姿勢。そして、ゆきの美人 純米酒 エクストラ 麹40%は、麹米と掛米の精米歩合を変え、麹の働きに工夫を重ねる造りです。

日本酒を味わうということは、単に甘口か辛口か、香りが華やかか穏やかかを判断することだけではありません。なぜその米が選ばれたのか、なぜその磨き方なのか、どのような酒質を目指しているのか。背景にある選択を知ることで、一杯の酒との向き合い方も変わります。

そして、酒の背景には、蔵人だけでなく、米を育む農家様や地域の方々の仕事があります。原料を育て、仕込みを支え、酒を届ける。それぞれの営みがあってこそ、私たちは一杯の酒を味わうことができます。

祇園華舞が大切にする、日本料理と酒の時間

日本料理は、料理人の技術だけで完成するものではありません。食材を育む方々、酒を醸す蔵人、器をつくる職人、空間を支える多くの方々の仕事が重なり、一つの食事の時間が生まれます。

祇園華舞では、料理や酒を一方的に主役とするのではなく、それぞれの持ち味を尊び、お客様の席にふさわしい状態へと整えることを大切にしています。

吉野桧一枚板のカウンターを囲み、目の前で完成する料理の所作を感じながら、酒の香りや味わいに心を向ける。料理の背景にある季節や文化、酒蔵様の考え方まで感じていただくことも、日本料理の時間が持つ価値の一つです。

一日一組様のために心を尽くすことは、希少性を示すためではありません。その日、その席に集うお客様と向き合い、食材や酒に整えていただきながら、記憶に残る時間をお届けするためです。

一期一会の御馳走とは、料理の品々だけを指す言葉ではありません。食材を育む方々の思い、受け継がれてきた技術、器や設えの美意識、そしてお客様と過ごす時間。そのすべてが重なって、一夜の記憶となります。

一杯の酒から、土地と造り手の仕事に思いを巡らせる。日本の食文化を受け継ぐ方々への敬意を忘れず、祇園華舞もまた、その文化を次の世代へとつないでまいります。

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祇園 華舞は「一期一会の御馳走」を通じて、作り手と食材、
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